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『埼玉県虐待禁止条例の一部改正条例案』に反対する意見書

2023/10/10

『埼玉県虐待禁止条例の一部を改正する条例案』に反対する意見書
https://onl.la/qe558Nz
 

埼玉県議会自由民主党議員団 御中

「埼玉県虐待禁止条例の一部を改正する条例案」に反対する意見書

私たちは、埼玉県内で子どもの育ち、子育て支援にかかわるボランティア活動・市民活動に取り組む団体の有志です。子どもたち、そして保護者が、まわりの人々との関係の中で、安心して暮らし、健やかに成長していける、そんな地域社会をつくろうと日々、それぞれのまちで取り組んで来ました。また、これまで長きにわたり地元自治体、埼玉県ともさまざまな協働の取組みを行って来ました。

その立場から、令和5年10月4日に提出された「埼玉県虐待禁止条例の一部を改正する条例」案について、強い懸念、心配を抱いています。改正の内容が、下記に記す新聞報道のとおりであるとすれば、この改正に強く反対いたします。また通報の義務についても深く憂慮します。改正案をいったん撤回し、あらためて子どもが健やかに育つために(虐待を防止するために)はどのような環境が必要なのか、現場で取り組む専門職や私たち地域で活動する市民と対話の機会を持っていただくことを強く要請いたします。

令和5年10月4日の県議会福祉保健医療委員会の議事の中で、以下のような事例は「置き去り」であり、「虐待」にあたると「例示」された。(東京新聞 2023年10月5日)
・子どもだけで公園で遊ばせること
・子どもだけでおつかいに行かせること
・高校生のきょうだいに子どもを預けて外出すること
・成人の見守りのない状態での集団下校

以下、反対する理由です。

(1)子どもの主体性をだいじにしながら安全を守ること

上に列挙された状況を一律に「放置」として条例違反ということになると、ほぼ全ての保護者(養育者)が条例に違反することになります。生活実態とかけ離れた提案といわざるを得ません。

私たち市民による活動の現場から見ても、例えば、以下のような懸念が寄せられています。

・子ども食堂やプレーパーク、学習支援など、子どもの居場所をめざす活動の現場には、多くの子どもたちが自分の選択で、自分の足で来てくれます。子どもたちだけの外出が一律に禁止されてしまうと、こうした子どもたちの居場所を奪うことになりかねません。

・登下校の見守りのボランティア活動は県内全域で取り組まれていますが、「成人の見守りのない状態での集団下校」が条例に違反するということになると、もはやボランティアの領域ではなくなります。自由な意志にもとづく活動として取り組むことができません。子どもたちと地域住民の接点を失うことになるのではないでしょうか。

・学童保育は需要に供給がまったく追いついていません。大規模化で過密・劣悪な環境の中で過ごしている子どもたちもたくさんいます。また、十分ではない待遇で働く支援員も多く、もし、保護者が条例違反をおそれ、入所への希望が殺到するようなことが起こると、制度・事業そのものが崩壊することも懸念されます。環境の整備が先なのではないでしょうか。

・不登校の子どもたちのほとんどは、自宅に居ざるをえません。保護者は、その間、必ず自宅に居なければならないということになると、必要な支援を受けることもできず、生活を維持することもままならない事態におちいる家庭もあります。
 

それが「放置」(虐待)にあたるのか、あるいは子どもの主体性をだいじにしながら信頼関係の中で行われていることなのか、どちらの状態にあるのかは、一律に外形だけを見て判断することはできません。子どもの成長は個人差があり、そこにいたる生活体験の量や、その子どもと地域との関係性はみな違います。どういう状況であれば子どもたちにまかせるのか、さまざまな要素を考えた上で、保護者は日々、迷いながら、ある時は子どもに任せたり、別の場合は付き添ったりをしています。改正案にあるような学年で一律に区切ることは、実態とかけ離れているだけではなく、子どもたちの人としての尊厳を傷つけるもの、大人への信頼を損なうものなのではないかと強く危惧します。

また、本来、子どもはまちの中で子どもだけの世界をつくって成長していくものでした。いま生活の環境が大きくかわり、常に大人がいる状況の中で暮らすことが当たり前になっています。しかし、時代は変わっても大人に指示され管理されるのではない「子どもの時間」を保障する必要があります。子どもだけで遊びこむことができる安全なまちをつくること、あるいは、大人がいる環境でも子どもたちが主体的、自治的に過ごせる環境をつくることは、私たち大人の責任です。一律に「子どもだけ」の時間を放置(虐待)として扱うことは、子どもたちの豊かな成長を保障することにつながりません。

以上のことから、現状の「例示」に示した虐待の解釈を撤回することを強く要望します。

 

(2)「見守り」(支援)こそが虐待の予防

今日、多くの保護者が、誰にも頼れない、頼ってはいけないという緊張感の中で暮らしています。今回、例示のようなありふれた日常の事例が「虐待」と定義されると、子育てはタブーばかりになります。それは身近な人に相談しにくくなり、より家族が孤立して課題を抱え込み、深刻化してしまう事態が想定されます。それは私たちの目指す社会でしょうか。

虐待の予防とは、保護者が孤立することなく、仲間をつくり、地域の人々に支えられながら暮らしていくことができる環境をつくることです。保護者をとりまく環境を変えることでしか、虐待を止めることはできません。必要なのは支援です。また子どもたちが、「助けて」といえる人間関係を身近な場所に持つことができるようにすることです。

改正案には、通報の義務化がうたわれています。子どもの命を最優先に考えるとき、緊急事態としてやむをえず関係機関に「通報」することはあるでしょう。しかし、日常の親子の暮らしを支えるのは、「通報する/される」という関係性ではありません。「見守られている」「支えられている」という安心感の中で生きることができたとき、はじめて虐待は防止できるのではないでしょうか。

本条例第三条には「虐待の防止等は、特定の個人又は家族の問題にとどまるものではない」それゆえ「社会全体の問題として、県、県民、市町村、関係団体等の地域の多様な主体が相互に連携を図りながら取り組まなければならない。」と明記されています。この趣旨からしても、今回の改正案はこの条例の目的に合致したものとはいえないのではないでしょうか。
 

よびかけ団体

特定非営利活動法人わこう子育てネットワーク

特定非営利活動法人ハンズオン埼玉

埼玉冒険遊び場づくり連絡協議会

一社)埼玉県子ども食堂ネットワーク

埼玉ホームスタート推進協議会

 

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